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神経伝達物質について④ ドーパミン

院長 丹羽 亮平 先生

名駅さこうメンタルクリニック
 院長 丹羽亮平

日本精神神経学会認定 精神科専門医
子どものこころ専門医
日本児童青年精神医学会 認定医
日本精神神経学会認定 精神科専門医制度指導医
厚生労働省 精神保健指定医
子どものこころ専門医機構 認定指導医

前回ブログに続きます。

 

①SSRIと神経伝達物質について

https://meiekisakomentalclinic.com/blog/525/

②神経伝達物質について セロトニン

https://meiekisakomentalclinic.com/blog/544/

③神経伝達物質について ノルアドレナリン

https://meiekisakomentalclinic.com/blog/570/

 

SSRIの話に繋げようと思っていますが、神経伝達物質の簡単な説明からです。

 

 

 

『ドーパミンについて』

 

 精神疾患に関連の深い神経伝達物質です。

セロトニン、ノルアドレナリンの説明に続きます 🙂 

 
 
 脳深部の黒質緻密部で作られ、脳内では、線条体路・中脳辺縁系路・中脳皮質路などの主に3つのルートで働くと言われており、これらの回路を介して、運動の制御、意欲を湧かせること(楽しみや快感に繋げる)、学習・習慣などにかかわると考えられています。
 
  ドーパミンが関わるとされる疾患は脳の障害部位に応じて多岐に渡ります。
 
 精神疾患に関するものを中心にまとめました。
 
 
『ドーパミン↓』
 
♠ADHD:前頭葉(前頭前野)、大脳基底核において神経伝達障害がおきている可能性を言われています。ドーパミン、ノルアドレナリン機能の低下が関わっています。
 
 「報酬系の障害」→目先の満足を優先してしまう傾向があります。
  刺激を求める行動(行動力があり新奇探索性が高い、とも言えます。)。衝動買い。順番が待てない。依存形成が高い。
 
 「実行機能の障害」→順序立てて行動することの苦手さ。覚醒レベルの調整(不注意)などが関係します。
 
♠うつ病(やる気がでない、集中力の低下、注意力の低下):ストレスにさらされ続けることで前頭前野の機能障害が起こる可能性が言われています。
 
パーキンソン病:黒質〜線条体路おける神経細胞の減少。歩き出せない、歩幅などバランス良く、スムーズに行動できないです。三大症状は、振戦、無動、固縮。
 
♠むずむず足症候群:明確な機序はわかっていませんが、鉄不足(鉄はドーパミンの生成に必要)、統合失調症の薬(ドーパミンを減らす)、パーキンソン病などがむずむず足症候群のリスクになっており、ドーパミン減少が関わっていると考えられています。一方、抗うつ薬の副作用でも起こりえます。
 
 
 
『ドーパミン↑』
 
♠チック症状:意図しない言葉がでたり、体が動いてしまう。
 
♠統合失調症:
 幻覚・妄想(陽性症状)の出現には中脳辺縁系のドーパミン亢進↑が関わっているとされます。
 一方、抑うつ、やる気が出ない(陰性症状)は中脳皮質系のドーパミン低下↓、セロトニンの関与が言われています。
 
 従来の抗精神病薬(統合失調症に対する薬)は陽性症状に効果をもつドーパミンの作用を抑える薬であり、副作用で脳内の他の部位におけるドーパミン低下症状(パーキンソン症状、錐体外路症状、陰性症状の悪化)を認めやすいものでした。 

 

 新しい抗精神病薬ほど、ーパミン低下症状の副作用が起こりにくく、またセロトニン受容体にも作用し陰性症状の改善効果も期待されます。

 

 

 

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院長 丹羽亮平