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ケトン体の抗うつ作用② 詳しい機序

院長 丹羽 亮平 先生

名駅さこうメンタルクリニック
 院長 丹羽亮平

日本精神神経学会認定 精神科専門医
子どものこころ専門医
日本児童青年精神医学会 認定医
日本精神神経学会認定 精神科専門医制度指導医
厚生労働省 精神保健指定医
子どものこころ専門医機構 認定指導医

前回ページ:ケトン体(糖質制限・ココナッツオイル)と抗うつ作用①

https://meiekisakomentalclinic.com/blog/672/

 

 

 

 

βヒドロキシ酪酸(β-hydroxybutyrate : BHB)と抗炎症効果・抗うつ効果について

 

 

 うつ病の機序について、従来の『モノアミン仮説』以外に『神経可塑性仮説・慢性炎症との関連』が近年相次いで報告されています。

 

 モノアミン仮説は、脳内のモノアミン(ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンなど)の減少によりうつ病が起こり、抗うつ薬にてモノアミンを増やすことでうつ症状が改善する、という仮説です。

 

 また、神経可塑性仮説とは、ストレスへの曝露により海馬・前頭皮質の脳由来神経栄養因子(BDNF)の産生を低下させ、神経新生やシナプス新生が減少することで抑うつ状態に繋がるのではないかと考えられています。

 (うつ病の患者群では、血清BDNF濃度とハミルトンうつ病評価尺度に負の相関がある、精神的ストレスの高い人ほど血清BDNF濃度はひくいなど、神経可塑性仮説を裏付ける報告が多数あります。)

 

 これらモノアミン仮説と神経可塑性仮説は共に成り立ち矛盾しないと考えられています。

 

 神経可塑性仮説について、神経障害を引き起こす機序のひとつとして『慢性炎症』が指摘されています!

 

 神経の免疫系の異常により起きた慢性炎症の結果、免疫関連細胞(ミクログリアなど)から炎症性サイトカインやフリーラジカルが持続的に産生され、神経細胞・シナプスなどの組織障害が起こることが考えられています。

(近年、糖尿病、がん、心血管系疾患など免疫系を介して慢性炎症との関連が確認されている疾患が多数報告されており、新たなる治療アプローチに繋がる注目の分野です!

 以前記載した脳腸相関とも繋がりがあります。)

 

 

 このような流れのなかで、2015年にケトン体のBHBが脳内炎症を抑制し神経細胞を回復させることがわかりました。

 また、ラットに対する反応ではBHBがストレスに伴ううつ病性の行動を改善させたことから、抗うつ薬としての可能性が期待されています‼︎

  

 

 Yamanashi T:Sci Rep. 2017 Aug 9;7(1):7677

   Youm YH:Nat Med.2015 Mar;21(3):263-9

 吉村 玲児:精神経誌112巻10号:982-985,2010

 門司 晃:精神経誌114巻2号:124-133,2012

 

 

 脳腸相関について→https://meiekisakomentalclinic.com/blog/104/

 

 

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