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発達障害 遺伝と環境② 「虐待」の影響 

院長 丹羽 亮平 先生

名駅さこうメンタルクリニック
 院長 丹羽亮平

日本精神神経学会認定 精神科専門医
子どものこころ専門医
日本児童青年精神医学会 認定医
日本精神神経学会認定 精神科専門医制度指導医
厚生労働省 精神保健指定医
子どものこころ専門医機構 認定指導医

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発達障害 遺伝と環境①↓

https://meiekisakomentalclinic.com/blog/648/

 

特に子どもの成長に対し「虐待」の影響は甚大です。

 

(また今度、虐待の影響についてよりくわしくまとめて記載しようと思います。)

 

 虐待は、愛着の形成(対人関係の基本になります。)に障害を来たし、心の外傷ともいえるトラウマを反復的に慢性的に繰り返すもの、といえます。

 

 発達障害と虐待に関する知識について、臨床のエキスパートである杉山登志郎先生の著書にて、愛着障害を『第4の発達障害』との記載があります。 

 

 (第一は知的障害などの古典的発達障害、第二はASD、第三はADHD、学習障害などいわゆる軽度発達障害を指しています。)

 発達障害の薬物療法 (岩崎学術出版社)の著書について一部まとめました。

 

 

 『子ども虐待の後遺症として生じる愛着障害の症状は、発達障害との鑑別が極めて困難な問題を含んでいる。臨床的には年齢がが上がるにつれて、一定のパターンで診断カテゴリーを渡り歩く。

 

 愛着障害 → 多動性行動障害 → 解離性障害 → 解離性同一性障害

                 → 非行      → 触法行為・薬物依存 』 

 

 

 

 →もともと発達障害のない子供が虐待などにより愛着障害が起きると、ADHDと区別のつかない状態を認めるケースが多い。

 

 

 

 また、発達障害をもつ児童にとって、虐待などの生育上の問題があることで、愛着が遅れたり、トラウマを繰り返すことで、発達障害としての症状(対人関係・コミュニケーションなどの中核症状)が悪化することは当然のことだと思います。

 

 

 つまり、冒頭に書いたようなことになります。

 

『発達障害には遺伝との関連がある。

 しかし、外部要因の影響も大きい。

過酷な育ち(虐待など)では発達障害に似た症状を来たす。

過酷な育ち(虐待など)では発達障害の症状の悪化を来たす。』

 

 

 これまで記載したことについて、逆に言うと、

 

 育て方について、(虐待などがなく)愛着をもち安心できる養育環境であれば、とくに発達障害のリスクにならないということを意味します。

 

 

 では、まったく発達障害を持たないこどもが、虐待などの過酷な養育環境により発達障害そのものを発病するのか?

 これはまだわかっていません。

 おそらくないのではないかと僕は思っています。

 

 

 

名駅さこうメンタルクリニック 院長

丹羽亮平