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発達障害 遺伝と環境①

院長 丹羽 亮平 先生

名駅さこうメンタルクリニック
 院長 丹羽亮平

日本精神神経学会認定 精神科専門医
子どものこころ専門医
日本児童青年精神医学会 認定医
日本精神神経学会認定 精神科専門医制度指導医
厚生労働省 精神保健指定医
子どものこころ専門医機構 認定指導医

ず、今回の結論を書かせていただきます。

 

『発達障害には遺伝との関連がある。(しかし直接的なものは見つかってない)

 そして、外部要因の影響も大きい。

過酷な育ち(虐待など)では発達障害に似た症状を来たす。

過酷な育ち(虐待など)では発達障害の症状の悪化を来たす。』

 

つまりは、

 

『発達障害は遺伝との関連がある。一般的な養育環境において育て方において発達障害のリスクではない。』

 

となります。

 

 

 

 

 発達障害で受診されるこどもの患者さんのお母さんから、

以前では「私の育て方が悪かったのでしょうか…?」と聞かれることがありましたが、最近は減ったように思います。

 

 

 一方で、最近、患者さんのご家族から、「この子の父親はアスペルガーだと思うんです。」「叔母がうつ病です。」など、精神疾患に関する家族歴を打ち明けて下さるケースは少なくないです。

 

 

 『発達障害が育て方の影響で発症するわけではない』

 『精神疾患には遺伝が関わる』

という認識が一般的に広がっているからでしょう。

 

 

 これまで、『遺伝』と『環境』を対立させ、『遺伝=変わらないもの』、『環境=変えられえるもの』という前提で考えることが多かったと思いますが、そこはスッキリ分けて理解することが難しい話であることが、最近分かってきました。

 

 まず発達障害が多因子モデル(病気の発症には遺伝的な素因と環境因が互いに影響していること)にて、遺伝的な素因の関わるとしても、それ以外の要因も大きく影響し、結果として認める症状は遺伝だけでは説明のつかないバラエティーに富むものです。

 

 ※『遺伝』と記載すると、「発達障害が自分の遺伝のせいでは…」と思われる方もいますが、現在、直接的な単一遺伝子は見つかっておらず、症状の発現そのものも多様性を持っています。

 また全く発達障害をまったく認めない両親から孤発的に発症するケースの多さ!

 『親の発達障害が直接的に遺伝する』というわけではないです。

 

 

 そして、受精~乳児期にかけての外部因子が発症に大きくかかわっているというのが、定説となってきました。

 

 外部因子とは、例えば、たばこ、妊娠週数、感染、抗生剤の摂取、水銀などの重金属の摂取、などです。

 (これらは親が意識しても回避できない事柄が多いと思っています。つまり、育て方が悪い、という話にはならない。)

 

 

 

 

 では、育て方が発達障害に影響を与えないのか?、というと「与える」というのが答えとなります。

 

 発達障害に限らずこどもの患者さんを診察する際に、「疾患の背景」が極めて重要な意味を持ちます。

 

例)

  生育歴

  家族歴

  家族構成、家庭仲・夫婦仲・祖父母の関係はどういうものか

  ネグレクト、身体・言葉・性的・教育虐待はないか

 

  など。

 

 

 

 特に子どもの成長に対し「虐待」の影響は甚大です。

 

次のページに、成長に対する「虐待」の影響について書きました。

 

発達障害 遺伝と環境② 虐待の影響

https://meiekisakomentalclinic.com/blog/651/

 

 

 

 

名駅さこうメンタルクリニック 院長

丹羽亮平