虐待の後遺症への対応。また、自閉症と自閉スペクトラム症が別物であることについて
今回は杉山先生の書かれた著書の紹介です。
虐待レベルの不適切な養育環境にさらされて成長することで、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)と同様の症状を認めることが分かっております。
それらの虐待の後遺症ともいえる、複雑性トラウマによって引き起こされる複雑性PTSD、愛着障害によってひきおこされるASD/ ADHD様の症状について(発達性トラウマ障害)の診断の行い方、治療法について記載されています。
当院は虐待歴のある患者さんは多くはないです。
自身の診療において、生育歴の聴取のモレは否定できませんが、全体的に育児に積極的であり治療熱心なご家族が多い様に感じます。
しかし、不適切な生育環境に伴いASD/ADHD様の症状が出現することのメカニズムや実際例の検討は、非常に診療において患者さんの理解を深める知恵になります。
少量処方やトラウマへの対応は取り入れられることは実践したいものです。
「トラウマへの対応」↓
また、この本の本筋ではありませんが、非常に同意する記載について、
自閉症 と 自閉スペクトラム症(ASD)は異なるものだ、ということです。
社会性の障害、「言語コミュニケーション障害」の理解ですが、
自閉症の方の周囲世界への独特の認識や、それを言語化するためのわずかな時間的な遅れ、言葉の用い方の独特さ
に比較すると、
ASDについて、
ASDはADHDとの併存多く、別々の疾患というよりも同じグループのサブグループの違いと認識したほうがフィットする。
ASD/ADHDにおける「コミュニケーション障害」は、注意の維持機能に由来することが多い。
ある事柄に注意が向けられた時に、思考を柔軟に切り替えることが難しいこと。などである。
名駅さこうメンタルクリニック
丹羽亮平