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子供の脳機能の向上の方法②

院長 丹羽 亮平 先生

名駅さこうメンタルクリニック
 院長 丹羽亮平

日本精神神経学会認定 精神科専門医
子どものこころ専門医
日本児童青年精神医学会 認定医
日本精神神経学会認定 精神科専門医制度指導医
厚生労働省 精神保健指定医
子どものこころ専門医機構 認定指導医

もみじ前回のブログ『子供の脳機能の向上の方法 〜発達障害やADHDに対して〜』の続きになります。↓

https://meiekisakomentalclinic.com/blog/1360/

 
 
文春オンライン記事にて、前回の記載から日にちがあきました。
 
朝晩は寒く、日に日に冬が近づいている事を感じます。
 
 
 
 前回の記事にて、発達障害やADHDなど神経発達障害のお子さんに「作業療法にて脳機能の改善を促すこと」について触れました。
 
 
 作業療法にて、楽しく会話をしながら、巧緻運動(はさみ使いなど指先を使った運動)、粗大運動(全身を使った運動)、作業の手順の組み立て(クッキングなど)などを行いますが、
それに伴う効果は『汎化』と言い、作業に使うピンポイントの脳部位に限らず、他の部位の脳機能にも影響を与えるのです。
 
 
例えば、澤口先生の著書における例では、脳の未分化な8歳以前のお子さんを対象に
 
丸レッド山なりのボールを投げて両手でキャッチすること
丸レッド箸使い
 
の上達は発達障害の改善に繋がることが挙げられます。
 
 
 幼児期の脳は未分化であり未成熟であるため、
上記の作業を担う神経システムが、発達障害に深く関連のある神経システム(前頭前野をメインとする脳間・脳内操作系)と関連がつよいからです。
 
 
 
・汎化、また神経の可塑性(神経回路や神経伝達が環境や行動などの刺激に応じて変化する能力)を踏まえて、発達障害やADHD、学習障害など神経発達障害のお子さんへのワーキングメモリーの訓練の重要性に話は移ります。
 
 
ワーキングメモリーの特徴は、
・発達障害やADHD、学習障害など神経発達障害の患者さんで低下している例が多い
・知的・情動的機能の最重要機能
・汎化が起こりやすい
・ワーキングメモリーを担う脳領域(前頭前野)
 
が挙げられ、端的に言うと、
ワーキングメモリーの改善を促すと、汎化的に神経発達障害を改善できるということです。
 
 
 
作業療法に関連することを記載すると、『山なりのキャッチボール』『箸使い』以外に、やはり重要なのが
丸レッド集団遊び です。
ワーキングメモリーは社会関係の円滑に行うために必要な能力として進化してきたため、集団遊びとワーキングメモリーの向上には関連があるのです。
 
 
 このように記載していくと、特別なことではなくて日常的に行えるような作業といえます。(ワーキングメモリーが日常的に使われる能力だからですが、)
 その中でも、一般的に脳機能の向上に良いとされる作業や運動は多数あると思いますが、よりワーキングメモリーの汎化が促されやすい作業を選択することが、治療という観点ではたしかに合理的なのかもしれません。
 
 
(澤口先生の著書にて、ブログで紹介した以外にも、年齢に応じた具体的なワーキングメモリーの訓練の例、またすべきではないことの記載があります。興味のある方はぜひ手にとって読むことを勧めます。)
 
 
 また、神経発達を促すことを目的に考えたときに、どんな治療・訓練でも「楽しく行う」ということが非常に重要です。
扁桃体等の関連になりますが、脳神経の発達をうながすホルモンが増えるからです。
 
 
 
 楽しくバラエティに富んだ訓練の行える作業療法は、ぜひ発達障害、ADHDなど神経発達障害のお子さんにお勧めしたい治療になります。
 
 
 

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丹羽亮平