薬物治療 pharmacotherapy

現在の精神疾患の治療の第1選択肢となっています。

世界中で研究されており、治療効果や内服方法、副作用について、豊富な情報があります。
その中から、患者さんそれぞれの症状に適した内服薬を提案します。
多剤併用、薬物依存に至らない内服を心がけます。 また、漢方薬の処方も保険診療にて行っております。

車の運転について

患者さんの状況により内服薬を判断するのでご相談ください。

メリット

効果発現が比較的早い。豊富な種類から選べる。
症状に応じて内服量の調節が可能(強い効果、弱い効果、両方ともできます)。保険診療に該当する。

デメリット

一定の副作用のリスクがある。車の運転が制限される。
ある程度の長期間の内服が必要。内服薬により、子供・高齢者に制限されるものがある。

抗精神病薬

統合失調症の治療に用いるお薬を「抗精神病薬」と呼びます。
主な働きは脳内のドーパミン系以外ニューロンの異常な働きを抑制することですが、
最近はセロトニン系ニューロンなどに作用するものも増えています。
薬の種類により、脳内のどこに効くかが異なり、その結果、効果と副作用が決まります。

抗精神病薬の効果

抗精神病薬には大きく3つの効果があります。

①幻覚・妄想・思考障害などを改善する抗精神病作用
②不安・不眠・興奮を和らげる鎮静催眠作用
③うつ気分・やる気の低下など、感情や意欲の障害を改善させる精神賦活作用

上記の作用によって、患者さんの実際の感覚は、
「幻覚や妄想は存在するが、無関心になる。行動に影響しなくなる」
そして、毎日の生活をリラックスして過ごすことが増えるようです。

抗精神病薬にはたくさん種類があり、上記の3種類の効果の違いや副作用に差があります。
患者さんと相談しながら「自分に合う薬」を見つけていきたいと思っております。

薬の副作用

①抗精神病薬に特徴的な副作用

  • そわそわしてじっとできない(アカシジア)、手が震える、よだれが出る(パーキンソン症状)、
    口などが勝手に動く(ジスキネジア)、筋肉の一部がひきつる(ジストニア)。
    これらは副作用を軽減する薬物を併用したり、薬物を減量することで改善します。
  • 他には、眠気、だるさ、立ちくらみ、口渇、便秘など。

②全ての薬に共通した副作用

  • 肝臓や腎臓への薬物の影響があります。

③滅多に起きないが重篤な副作用

  • 悪性症候群(高熱、筋強剛など)。これはすみやかな治療が必要です。
    服薬している間、血液検査・尿検査・心電図などを3~6カ月に1回チェックすることをお勧めします。

抗精神病薬は長期間飲み続けることを前提とした薬なので、基本的に10年以上服用を続けたとしても問題のないものです。
副作用を恐れるあまり内服を患者さんの判断で中断し、病気が再発してしまうのは残念なことです。
心配な事があれば、早めに医師に相談してください。

抗うつ薬

抗うつ薬はすぐに効果が出るものではなく、徐々に増量しながら2〜4週間で効果が出始めます。
効果の内容と副作用を考えながら患者さんそれぞれにあったお薬を選びます。

①SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

脳内の神経細胞の間でセロトニンの量を調整するよう働きます。
副作用が比較的少なく抗うつ作用が強いため、現在の抗うつ薬の中で第一選択薬として使われます。
また、抗不安作用も認めるため、不安症状が強い患者さんにも使われます。

副作用

飲みはじめに吐き気や便秘、下痢など消化器症状があらわれることがあります。これらの症状は1~2週間で消えることが多いです。 他に性機能障害(勃起不全、性欲減退など)、自律神経系の症状(発汗など)のリスクが言われています。



アクチベーション・シンドローム

極めてまれに起こる危険な副作用。SSRI、SNRIの投与開始から増量期間中に不安、焦燥、躁状態を来たし、最悪の場合、自傷行為や自殺行為に至る可能性があるものです。 未成年へのSSRI、SNRIの投与は極めて慎重に検討しなくてはいけません。

②SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)

脳内の神経伝達物質であるセロトニンとノルアドレナリンの両方を調整する作用があります。
その分、意欲の向上に効果があると言われています。SSRIと共に抗うつ薬の第一選択薬です。
線維筋痛症にも治療効果があります。
副作用もSSRIとあまり変わりませんが、尿閉、血圧上昇などの報告もあります。

③NaSSA(ノルアドレナリン作動性、特異的セロトニン作動性抗うつ薬)

SSRI・SNRIと異なる作用の抗うつ薬ですが同等の効果があります。
副作用として、眠気や体重増加が問題になります。
(吐き気や性欲の低下などのSSRI・SNRIで認めた副作用は起きづらいです。)

④三環系抗うつ薬

もっとも古くからある抗うつ薬です。
強力な抗うつ作用がある一方、副作用も多く、重篤なものも含まれます。
副作用はめまい・ふらつき、口渇・便秘・尿閉、性機能障害がよく認められます。
また頻度は低いですが、不整脈など致死性のある副作用も報告されています。

⑤四環系抗うつ薬

眠気の強いものが多いです。現在、抗うつ薬のメインで使われることは少ないです。

ベンゾジアゼピン系の薬

睡眠剤、抗不安薬、抗けいれん薬をして使われます。ベンゾジアゼピン系薬剤は種類が豊富ですが、薬の作用時間や以下の作用の強さが変わります。

催眠作用

眠気を起こす効果


筋弛緩作用

筋肉の緊張を和らげる効果(→けいれん時に使ったり、肩こりや頭痛に用いることがあります。)


抗不安作用

不安を和らげる効果(→抗不安薬として用いることがあります。)


お年寄りの方や転倒しやすい方には筋弛緩作用の強いものや、長時間作用するものは避けたりします。患者さんそれぞれの状況に合わせて話し合い、可能な限り少ない量で依存性や耐性に注意して処方したいと思います。 (特に不安障害の方にベンゾジアゼピン系薬剤を長期使用することへの注意が海外では促されています) また、アルコールと一緒に内服することは絶対にやめてください。

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