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精神科薬と不整脈

 当院では診察に応じて、心電図、採血、脳波など検査を行っております 😀 

 

 前回のブログで物忘れにて神経内科を受診された患者さんがADHDの診断に至ったケースを書きましたが、逆のパターンもあります。つまり、精神疾患だと思いメンタルクリニックを受診した結果、身体疾患だったというケースです。

 

 開業してから1年数か月間で経験した患者さんの中でも、

 

 ・うつ病だと思い受診された患者さんが甲状腺の疾患だったケース

 

 ・もともと神経症を患っていた患者さんが、パニック発作に伴う動悸と思っていたら不整脈だったケース

 

 が記憶に新しいです。

 

 

 検査は、血中濃度など内服薬に対する反応、診断(身体疾患のルールアウト)、持病の有無、腎臓や肝臓の機能など全身状態の確認、を目的に行っています。

 

 

  

 

 今回は心電図について詳しく書きます。

 

 

 精神科に限らず薬物治療をする上で気をつけなくてはならないリスクが不整脈です。

 

 特に、QT延長症候群、極めて頻度はまれながら致死的な結果を招きうる可能性があります。

 

 QT延長症候群は心室の再分極が遷延する状態であり、失神を引き起こしたり、場合によっては突然死に結びつくような致死性不整脈(心室期外収縮・Torsade de Pointes → 心室細動)が起こることがいわれています。

 

 主にQT延長症候群は二つ種類の分けられます。

 

 ・先天性QT延長症候群:幼少期から指摘されるおよそ2500人に1人くらいの発症。

 

 ・後天性QT延長症候群:成人になってから発症(高齢者の方が起こりやすい)。原因は、薬剤性、徐脈、低カリウム血症などがあります。

 

 後天性QT延長症候群の多くは薬剤性で起こると言われており・抗不整脈薬・向精神病薬・抗うつ薬・抗菌薬・抗癌薬 などが原因薬剤として基本的に挙げられるものです。

 

 これらの内服薬のうち、精神科医にとっては、向精神病薬、抗うつ薬が日常的に処方しうる内服薬となりますが、これらの抗精神病薬が単独でQT延長症候群を引き起こす頻度は抗不整脈薬に比較すると極めて低いと考えています。

 

  QT延長症候群を引き起こしうる抗精神病薬

 

 ・向精神病薬:クロルプロマジン、ハロペリドール、フェノチアジン

 

 ・抗うつ薬:三環系抗うつ薬、エスシタロプラム

 

 持病や不整脈の既往のない健康な成人に、向精神病薬、抗うつ薬を処方上限を守って処方した際には、この薬のみリのスクでは致死的な不整脈はなかなか起こり得ないと。

 

 しかし、他のQT延長症候群のリスクと複数合わさることで引き起こされることがあります。

 

 徐脈、電解質異常(低K血症など)、心不全の既往、甲状腺機能低下症、加齢、女性…

 

 これらのリスクには特異度が高いものから低いものがありますが、これらが複数組み合わされた状況においてQT延長症候群のリスクのある内服薬を使う際は、

 ・内服薬の変更を考慮すること

 ・内服量を上限こえないこと、

 を前提に心電図の検査を勧めています。

 

 

 とはいっても、上記のQT延長症候群のリスクのある抗精神病薬のなかで実際に処方することのある薬は『エスシタロプラム』がほとんどです。

(他の薬は前医の引継ぎで処方するケースでしょうか)

 

 リスクは理解しつつ過剰に恐れずに使うことができたらと思います。

 

 

 名駅さこうメンタルクリニック

 院長 丹羽亮平