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統合失調症の治療 持続性注射薬(デポ剤)について

院長 丹羽 亮平 先生

名駅さこうメンタルクリニック
 院長 丹羽亮平

日本精神神経学会認定 精神科専門医
子どものこころ専門医
日本児童青年精神医学会 認定医
日本精神神経学会認定 精神科専門医制度指導医
厚生労働省 精神保健指定医
子どものこころ専門医機構 認定指導医

デポ剤についての説明と勉強会参加の所感です。

 

『持続性注射薬(デポ剤)』

 統合失調症の患者さんに対する薬の注射薬です。1回の注射で内服薬と同等効果が2週間〜1ヶ月の効果があります。近年、デポ剤は内服薬に比較し日常生活のメリットが多いことで注目されており、非定型抗精神病薬の種類のデポ剤が3剤開発されています。

 当院で取り扱っているデポ剤の製品名は、以下のものがあります。

・リスパダールコンスタ(リスパダールの種類、2週間効果を持つ)

・ゼプリオン(インヴェガの種類、4週間効果を持つ)

・エビリファイ(エビリファイの種類。4週間効果を持つ)

※ハロマンス、フルデカシンなど既存の定型抗精神病薬の持続性注射薬は継続使用されている患者さんを除き、基本的に新規患者さんへの使用はしない方針です。

♠メリット♠

・血中濃度が安定します。 

抗精神病薬について、血中濃度が高すぎると副作用が出現するリスクが増え、一方、血中濃度が低いと薬効の発現に至りません。持続性注射薬は血中濃度の維持が内服薬よりも安定しているため、薬物効果が得やすく、副作用のリスクが低いです。

・服薬を忘れがちな患者さんに向いています。

服薬を忘れやすい患者さん、普段はキチンと服薬されていても精神症状の悪化時に服薬が難しい患者さんに対しては、デポ剤がお勧めです。

・旅行、仕事の出張のときにお薬を飲まなくてもいいです。(内服している姿を他人から見られることを気にする必要はありません。)

♣デメリット♣

・副作用が出現した時、症状が長引きます。

血中濃度が安定する一方、副作用の出現時に症状の軽減まで時間がかかります。リスクを下げるため、同じ種類の内服薬で慣れている患者さんにデポ剤を導入することが多いです。

・注射薬の痛み

・お薬代が高い。

自立支援医療制度の対象となり費用負担が軽減される患者さんに使用することが多いです。

 

 もしデポ剤の使用希望の患者さんがいらっしゃれば、院長までぜひお声がけください。  
  

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先日、 加藤理事長の「統合失調症・発達障害講演会」に参加しました。

薬物治療のトピックにて、統合失調症に対する持続性注射剤(デポ剤)の使用について取り上げられていました。

 副作用の少ない非定型抗精神病薬のデポ剤が出てきたことは、治療の選択肢が増えて好ましいことだと思います。

 限られた国民医療費の中で、高額なデポ剤の使用は慎重に行わなければならないですが、一方、デポ剤の使用にて症状が安定し入院率が下がれば、入院医療費が抑えられるので、結果的に国民医療費を減らせるのではないかと考えます。



  名駅さこうメンタルクリニック
院長    丹羽亮平