皮膚むしり症 強迫性障害の分類
以前勤めていた病院にて外来診療していた女性患者さんについて、最近思い出すことがあります。
30代で専業主婦、華美ではないが清潔感のある服装。
適応障害(うつ病の診断閾値下)の診断にて、家族関係をメインに不安が強く、抑うつ気分、不安、不眠を主訴に通院されていました。
毎回、診察中レース生地の手袋をはめており、当初清潔強迫の可能性を考えていましたが、
待合にて手袋を外し爪の逆剥けや爪をめくる様子を繰り返し認め、手の傷を隠す為に手袋をつけていたようでした。
先日、米国精神医学会の公式診断基準『DSM−5』に記載されている『皮膚むしり症』をみて、その患者のことを思い出しました。
『皮膚むしり症』 Excoriation(Skin‒Picking)Disorder
2013年、DSM−5にて初めて病名がつけられた疾患です。強迫性障害と同じ分類に属します。
『強迫症および関連症群』DSM5における病名の日本語訳ガイドライン
(https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/dsm-5_guideline.pdf)
生涯有病率は1~2%と言われていますが、軽度な症状を含めると『むしる癖』を認める方は多いのではないでしょうか。
(強迫性障害はDSM-IV では不安障害の章で扱われていましたが、DSM-5 ではひとつの章として新設された『強迫性とその関連の障害の章』で扱われることになりました。 )
https://meiekisakomentalclinic.com/blog/432/
爪のささくれやかさぶたを繰り返しむしることで瘢痕化を認めることもあります。
無意識に行う方、緊張・ストレス時に『むしる』ことで不安な感情を解消する方がおりますが、習慣化しやすいといえます。
同時に、髪の毛を抜く行為、爪や唇をかむ、など他の身体を傷つける反復した行為を認める患者さんが多いです。
これらは強迫性障害の分類の別の疾患となります。
『抜毛症』 『身体集中反復行動症』
*ガイドラインに基づく診断症状は以下になります
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繰り返し皮膚をかきむしり、その結果、皮膚に傷害が生じる。
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皮膚をかきむしることを減らす、または中止する試みが繰り返された。
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皮膚をかきむしることが臨床的に著しい苦痛または社会的・職業的・ 他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
治療:抗うつ薬(SSRI)、心理カウンセリング(認知行動療法、など)
また、症状を家族や友人、医療関係者に打ち明け、悩みを共有することでより治療に向き合うことが可能になります
名駅さこうメンタルクリニック
院長 丹羽亮平