強迫性障害とうつ病
以前働いていた精神病院でお会いしていた患者さんのことを思い出すことだすことがあります。
非常に教養が豊かな方で、家に長年集めた歴史の記録書や参考書をたくさん所有していらっしゃいました。
しかしある日、それらの本に含まれている写真や挿絵の中に肌の露出の多い児童のものがあることに対して、これは児童ポルノ所有の罪に抵触するのではないか、と不安が生まれたそうです。
自分自身でもばかばかしいと思いながらも不安が頭から払拭できず、結局、大事に所有していた本を破棄したり、写真のみを切り抜く作業を数か月かけて行いました。
このことで精神状態は悪化しその後、うつ病と診断され、強迫性障害と並行して治療を行いました。
障害に至らないルーチン、生活習慣である範囲内では規則正しく、責任感が強い、まじめ、熱心、という他者からプラスの評価になることが少なくないです。
一方、「強迫性障害」に至ると、日常の生活の質(QOL)は大幅に下がります。
自分が苦痛に感じている考えや行動を取らざるをえないからです。
強迫観念:繰り返し生じる苦痛な考えであり、患者さんが考えに抵抗しても抗うことができない。
この考えは患者さん自身も不合理でばかばかしいと気が付いています。
(患者さん自身がばかばかしいと思っていないときは、『妄想』になるかもしれません。)
強迫観念に抵抗したり、和らげようとすると強迫行動に繋がります。
(例えば、不潔恐怖の強迫観念→何度も手を洗うという強迫行為)
強迫観念や強迫行為を認める患者さんには、うつ病を併せ持っている可能性を意識しています。
うつ病との関連について、
⋅うつ病患者さんの20%以上では、強迫症状がうつ病の発症時、またはそのあとに生じ、うつ病の治療により改善する。
⋅強迫性障害の患者さんの3分の2以上が、生涯のうち1回以上のうつ病エピソードを経験する。
⋅強迫性障害、うつ病とも治療は抗うつ薬が第一選択になります。
強迫観念、強迫症状など、軽くても思い当たる症状のある方はぜひご相談ください。
参照:金芳堂『Crash Course 速習 精神医学』斉尾武郎
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名駅さこうメンタルクリニック
院長 丹羽亮平