メマンチンが自閉スペクトラム症(ASD)の社会機能障害を改善!

今回は、アルツハイマー型認知症の治療薬として知られるメマンチン(商品名メマリー)について記載させていただきます。
非常に僕自身関心の高い薬です!
もともとメマンチンは、NMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体拮抗薬に分類されるお薬ですが、グルタミン酸系に対し神経細胞の過剰な興奮を抑えることで、神経保護的に働く点があります 。
認知症のお薬であるため、認知機能症状の進行抑制効果があるのですが、
加えて、高齢者の行動・心理症状(BPSD:イライラ、興奮、暴言、暴力など)の改善を目的に処方されることが非常に多いです。
メマンチンの処方にて感情や言動が落ち着くことで、ご家族や介護される方が、ホッとしたと伺うことがよくあります![]()
近年、このメカニズムが、うつ病やPTSD、ASD(自閉スペクトラム症)に伴う社会機能障害、強迫症状といった、神経の過興奮、強迫的な行動を軽減することが報告され、治療目的に応用できないかと検討されています。
自閉スペクトラム症(ASD)の社会機能障害の改善に期待!!
ASDは、社会的コミュニケーションの苦手さとこだわり行動(限定的な反復的行動様式)を中核症状とする疾患です。
これまで、ASDについての内服薬というと、アリピプラゾール(エビリファイ)が『小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性』に対する認可薬としてありました。
また、気持ちの切り替えのむずかしさに伴う不安感や抑うつ気分を認める際には、抗うつ薬等の検討もされました。
しかし、ASDの社会的機能障害に対する薬物治療については、十分に効果の望めるものはありませんでした。
ところが、2025年8月に発表された論文によると、二重盲検ランダム化比較試験にてASDの若者を対象にメマンチンの効果が検証され、メマンチンがASDの社会機能障害を統計的に有意に改善するという結果が示されました 。
ASDの患者さんでは、健常者と比較して脳の前帯状皮質前部という部位のグルタミン酸濃度が高いことがわかっており 、特にグルタミン酸濃度の高い群において、メマンチンによる改善効果がより顕著に得られる結果でした 。
まだ実際の臨床においてメマンチンを治療に使用することはできませんが、これまでASDのコミュニケーション障害はお悩みの方が非常に多く多岐に及ぶものの、「薬剤における治療が難しい」とされてきました。
この研究結果は患者さん当事者やご家族にとって、大きな可能性を秘めたものです![]()
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名駅さこうメンタルクリニック
院長 丹羽亮平
・子どものこころ専門医
・日本児童青年精神医学会 認定医
・日本精神神経学会認定 精神科専門医
・日本精神神経学会認定 精神科専門医制度指導医
・精神保健指定医



