PTSDの心理療法に注意! 心理療法の副作用

しばしばPTSDの訴えにて来院される患者さんがいらっしゃいます。
まずお話を傾聴し、治療をどのようにするのか話し合いますが、
PTSDの治療について、とくに注意が必要なのは、じつは「心理療法」です。
精神科薬剤を内服することに抵抗感があったり、副作用が出た経験のある方では、治療として「心理療法」を希望される方がどの精神疾患の患者さんでも多いです。
心理療法について、基本的に副作用はないです。
心理療法だけでは治療効果が弱い疾患もありますが、補助的な治療として行うのであれば、
心理療法(心理カウンセリング、認知行動療法、疾患教育、ペアレントトレーニング、マインドフルネスなど)はあらゆる精神疾患に対して何かしらの有意義な効果をもちます。
ただし、PTSD、またトラウマに関連した症状に関しては注意が必要です。
PTSDの治療における第一原則は、心理的に安心な状況を作り、安定した環境にて日常を過ごせることと言えます。
しかし、PTSDの治療として、最近徐々に広まりつつあります認知行動療法の特徴的な方法(持続エクスポージャー療法、認知処理療法、眼球運動脱感作療法:EMDRなど)はトラウマ体験に関連した記憶や感覚を想起することになり、症状の悪化を認めるリスクがあります。
トラウマに関連した感覚や記憶に苦しみ、フラッシュバックを伴う不安や抑うつの悪化や不眠症状を認めるような急性期の時点では、まだ上記のような積極的にトラウマ体験に向き合う心理療法は避けた方が良いです。
まずは、落ちつける環境を整え、ゆっくりと休息をとりながら現在の症状の安定を目指しましょう。(必要により、薬物療法やTMSなど考慮。)
名駅さこうメンタルクリニック
院長 丹羽亮平
・子どものこころ専門医
・日本児童青年精神医学会 認定医
・日本精神神経学会認定 精神科専門医
・日本精神神経学会認定 精神科専門医制度指導医
・精神保健指定医