小児に精神科薬を処方する時に気を付けること

多くいらっしゃるわけではないですが、
小児と大人の家族で受診されて、それぞれ同じお薬を処方されて内服する方がいらっしゃいます。
例えば、ADHD薬や、エビリファイ(アリピプラゾール)などです。
お薬の種類にもよるのですが、案外、
小学生くらいのお子さんと成人患者さんで内服量があまり変わらない薬剤もあるのです。
(もちろん添付文書上の指示にしたがった処方量です。)
体重や体格に大きな差があるのに不思議に思われるかもしれません。
児童患者さんに薬物を処方する際に、以下の点に注意する必要があります。
小さいお子さんは成人と明らかな体格差がありますが、体重で調整すると、肝臓や腎臓の重さは相対的に成人よりも大きくなります。
また、小児は体水分が比較的多く、脂肪が少なく、薬物が結合する血漿アルブミンが少ない傾向にあります。
その結果、小児は肝臓を通った時の薬物の吸収量が多く、生物学的利用率が低く、代謝および排泄が速くなります。
つまり、子どもの体重に比例したかたちで、成人の投与量よりも少ない量を投与してしまうと、血中濃度が上がらず薬物の効果が十分に得られない、ということです。
とはいっても、
基本的には、成人も小児も種類・量とも多く処方しすぎないように気を付けています。
安全性と有効性のバランスが大事です。
以下は、FDA(米国食品医薬品局)において選ばれた向精神薬と小児における有効性のエビデンスレベル(18歳未満)をまとめたものです。
薬剤名 | 対象疾患 | 有効性のエビデンスレベル | 米国FDAに承認された適応年齢(年単位) |
---|---|---|---|
メチルフェニデート及びデキストロメチルフェニデート | ADHD | タイプⅠ | 6歳以上 |
アンフェタミン | ADHD | タイプⅠ | 3歳以上 |
アトモキセチン | ADHD | タイプⅠ | 6歳以上 |
クロニジン | ADHD | タイプⅠ | 6歳以上 |
グァンファシン | ADHD | タイプⅠ | 6歳以上 |
フルオキセチン | うつ病 | タイプⅠ | 8歳以上 |
セルトラリン | OCD | タイプⅠ | 6歳以上 |
エスシタロプラム | うつ病 | タイプⅠ | 12歳以上 |
リスペリドン | 統合失調症、双極症、攻撃性 | タイプⅠ | 5~16歳 |
アリピプラゾール | 統合失調症、双極症、攻撃性 | タイプⅠ | 6歳以上 |
リチウム | 双極症 | タイプⅢ | 7歳以上 |
有効性のエビデンスレベル(タイプⅠの方がエビデンスレベルが高い)
-
タイプⅠ: よく計画された複数の無作為化比較試験の少なくとも1つの系統的レビューから得られる強いエビデンス。
-
タイプⅡ: 少なくとも1件の適切に設計された無作為化比較試験から得られる強いエビデンス。
-
タイプⅢ: 無作為化、単群、事前‐事後、コホート、時系列、または患者対象研究を行わない、十分に計画された試験からのエビデンス。
-
タイプⅣ: 2つ以上の施設または研究グループによる、よく計画された非実験的研究からのエビデンス。
-
タイプⅤ: 臨床的証拠、記述的研究または専門委員会の報告書に基づく、尊重される当局の意見
名駅さこうメンタルクリニック
院長 丹羽亮平
・子どものこころ専門医
・日本児童青年精神医学会 認定医
・日本精神神経学会認定 精神科専門医
・日本精神神経学会認定 精神科専門医制度指導医
・精神保健指定医
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
当院ホームページはこちらより
https://meiekisakomentalclinic.com
名駅さこうメンタルクリニック
〒451-0052
愛知県名古屋市西区栄生2-7-5 キョーワ調剤薬局2F
電話 : 052-551-7717
FAX : 052-551-7727