新型うつ病・非定型うつ病 診断や治療を詳しく【精神科医が説明】
非定型うつ病とは、『新型うつ病』とも表現されますが、
1994年にDSM Ⅳで定義されたことから広く認知されるようになった、比較的新しい疾患といえます。
この数年で診断される方が非常に増えています。
前回ブログでは、例を挙げましたが、
非定型うつ病・新型うつ病について詳しく説明 【精神科医が解説】
非定型うつ病(新型うつ病)における、患者さんのよく悩まれる点は、「楽しく過ごせる時がある」ため、周囲からは、「精神的に落ち込みが続いており苦しい状況であること」の理解がされにくいことです。
そのため、前回のブログに記載した例のように、パーソナリティ障害と診断されたり、周囲の方から気分の浮き沈みが大きいのは性格が原因ではないか?、と指摘される事が少なくないため苦しまれる方が多く見えます。
また、定型のうつ病(従来の大うつ病性障害)に比較すると、薬物治療が奏功しにくい点が治療が難航しやすい理由です。
従来のうつ病は、過大なストレスに伴うセロトニン神経系の機能異常に伴う障害、と説明できますが、 新型うつ病の生化学的なメカニズムは現時点でも明確にはわかっておりません。
また、他の精神疾患(不安障害や強迫性障害、自閉スペクトラム症や注意欠如多動症)との併発が多いことや、生育環境の影響がありうること、トラウマ経験のある方が多いこと、などが指摘されており、今後、診断基準や分類が変更しうる可能性もあると思います。
抗うつ薬を主剤として、不安や焦燥感、衝動性の状態にあわせて抗不安薬 OR 抗精神病薬の追加が薬物療法のベースになりえます。
また、マインドフルネスなど現在の思考に目を向ける心理療法は勧めたいです。
(過去のエピソードや現在の苦しい症状を焦点化するカウンセリングは、患者さんにより悪影響を及ぼす可能性があります)
そして、さまざまな疾患に特徴的な症状を混合して認めるケース(例えば、診断項目によるとASD・ADHDもうつ病症状も強迫性症状もみとめる、など)では、TMSが副作用が少なく全般的に奏功しやすいといえます。
お悩みの方がいらっしゃれば、ご相談ください。
*非定型うつ病
うつ病カテゴリーのサブグループに所属するため、基本的には、気分の落ち込み・抑うつ気分がメインの症状となるのですが、他の症状や行動傾向が、従来のうつ病と異なるため『非定型うつ病』と言われます。
一般的には非定型うつ病は新型うつ病ともいわれています。
特徴 | うつ病 | 非定型うつ病 |
---|---|---|
気分の反応性 | 良いことが起こっても気分が改善しない | 良いことが起こると一時的に気分が改善する (気分反応性が高い) |
喜びの喪失 | ほとんどすべての活動において喜びが失われる | 特定の事は楽しく行うことができる |
日内変動 | 朝に抑うつ状態が悪化する | 特に日内変動は見られない |
食欲と体重 | 食欲不振や体重減少が見られる | 食欲増加や体重増加が見られる |
睡眠 | 早朝覚醒 | 過眠の傾向 |
身体の重さ | 特に感じない | 鉛様の麻痺(身体が重く感じる) |
対人関係 | 特に過敏性は見られない | 長期に渡る対人関係の過敏性が見られる (人間関係に不安を感じやすい。緊張しやすい。等) |
DSM-5の非定型うつ病の診断基準
-
気分の反応性: 楽しい出来事があると気分が一時的に改善する。
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以下のうち2つ以上が認められること:
- 有意な体重増加または食欲増加
- 過眠(過剰な睡眠)
- 鉛様の麻痺(身体が重く感じる)
- 対人関係での拒絶に対する過敏性
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メランコリアの特徴(従来の大うつ病の症状)や緊張病(幻覚・妄想など)の特徴を伴わないこと。
特徴
- 気分の反応性: 非定型うつ病の最大の特徴で、落ち込んでいても楽しい出来事があると気分が改善します。
- 過眠と過食: 定型うつ病とは異なり、非定型うつ病では過眠や過食が見られることが多いです。
- 鉛様の麻痺: 身体が鉛のように重く感じ、動くのが困難になることがあります。
- 拒絶過敏性: 他者からの批判や拒絶に対して過度に敏感になり、些細なことでも大きく落ち込むことがあります。
名駅さこうメンタルクリニック
丹羽亮平
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