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疼痛性障害について 診断例と治療 【医師が解説】

院長 丹羽 亮平 先生

名駅さこうメンタルクリニック
 院長 丹羽亮平

日本精神神経学会認定 精神科専門医
子どものこころ専門医
日本児童青年精神医学会 認定医
日本精神神経学会認定 精神科専門医制度指導医
厚生労働省 精神保健指定医
子どものこころ専門医機構 認定指導医

 

 

 

 

 

 精神的な症状以外で、精神科に来院される患者さんもいらっしゃいます。

 

 しばしば診察するのは「痛み」についてです。

 

 

 

 

 

 最近、診察したケースは、

 

 

「全身の痛み、しびれるような感覚がある。原因はわからないが数か月続く。

 日により痛む部位が変わるが、ひどくなる一方である。

 整形外科と脳外科に受診したが異常はないと言われて、精神科受診をした」

 

 

 

 

診察にて、以下のことが分かりました。

 

 

・長年の家庭問題と仕事でストレスを抱えていたが、1年前に自宅介護していた親が入所した。

 

・抑うつ気分、人ごみにおける軽度のパニック発作、不眠症状あり

 

・痛みに悩まされて、家事や仕事、外出がしばしば困難になる。

 痛みの解消を試みて、複数の医療機関を受診、マッサージや針治療も行った。

 痛みの身体的な原因は分からない。(他科にて異常なしとの事。)

 

 

 

 

 こちらの患者さんは、疼痛性障害と診断。

 

 

 薬物療法は過去の副作用で悩まされた経験があるため希望されず、心理カウンセリング、保険外にてTMS治療を施行しております。

 

 

 治療は奏功し、痛みの軽減、気分の改善にて外出や家事などの社会的機能の向上を認めました。

 

 

 

 

 

 

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 明確な身体的な原因がないけれど痛みを慢性的に感じる疾患として、疼痛性障害があります。

 DSM5では身体症状症のひとつに分けられています。

 

 

 

 

身体症状症(Somatic Symptom Dysorder) のDSM5診断基準は以下になります。

 

 

A.1つまたはそれ以上の、苦痛を伴う または日常生活に意味のある混乱を 引き起こす身体症状


 

B.身体症状、またはそれに伴う健康へ の懸念に関連した過度な思考、感情 または行動で、以下のうち少なくと も1つによって顕在化する

1)自分の症状の深刻さについての不 釣り合いかつ持続する思考

2)健康または症状についての持続す る強い不安

3)これらの症状または健康への懸念 に費やされる過度の時間と労力

C.身体症状はどれ一つとして持続的に 存在していないかもしれないが、症 状のある状態は持続している (典型的には6か月以上)

 

 

 

 

 痛みが慢性的に続き、社会生活や家庭生活に多大な影響をもたらすものですが、

原因は明確にはわかっていない疾患です。

 しかし、セロトニン系の機能障害の関連が言われています。

 

 

 

 

 まずこの疾患の難しい点は「身体的な痛み」がメインのお悩みなのに精神科で治療をするというところでもあります。

 

 患者さんが治療の方向性に納得されるかは、治療による改善効果にも影響を与えます。

 

 

 また、うつ病、双極性障害、不安障害、自閉スペクトム症、統合失調症等の精神病性障害などの、精神疾患の併存がしばしばあり、治療の難しさにつながっています。

 

 

 

 

 治療については、まずは医療者と患者さんが治療に信頼できる関係性の構築が前提となりますが、

 

 その上で、

 

 

 薬物治療(抗うつ薬のなかでも、セロトニン↑ノルアドレナリン↑の作用をもつSNRI、三環系が挙がります。)、カウンセリング、他にTMSなどが有効と考えられます。

 

 

 

 

 

 お悩みの方はかかりつけの医師にご相談ください。

 

 

 

 

 

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