メラトベルとロゼレムの違い①
睡眠と体内リズム関わるメラトニンと同じように、メラトニン受容体(MT1・MT2受容体)を活性化し、自然な形の入眠を促す睡眠剤が、メラトニン受容体作動性の入眠改善薬、ロゼレムとメラトベルの二つです。
メラトニン受容体作動薬の睡眠剤としての特徴は、他のGABA系に作用する睡眠剤(BZP系、非BZP系睡眠剤)に比較すると、生体内のホルモンと同じように作用するので、比較的「安全」といえます。
つまり、従来の睡眠剤と比較すると、効果が弱いとも言えます。
そもそも、ロゼレムとメラトベルは何が違うのか?
メラトベルは、一般名がメラトニンです。つまり脳内で作用するホルモンのメラトニンそのままなのです!
生体内で自然な効果を持つのはこのためです。
一方、ロゼレム(一般名ラメルテオン)は、視交叉上核にあるメラトニン受容体MT1、MT2に選択的に作用し、メラトニンと同じような入眠を促す作用をもちます。しかし、ロゼレムのMT1、MT2への作用がメラトニンよりも数倍強いとされるために、催眠作用はメラトニンよりも強いと考えられています。
ロゼレムとメラトベルは適応症が違う。
ロゼレムは大人用の錠剤ですが、メラトベルは小児用の粉薬です。
ロゼレムの適応症は「不眠症における入眠困難の改善」
メラトベルの適応症は「小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善」です。
適応症のターゲットがことなります。
メラトベルは国内唯一の小児で認可された「入眠困難への薬」です。
ちなみにメラトベルは、アメリカの診断基準DSM-5にて、「不眠障害の入眠困難」および「概日リズム睡眠-覚醒障害群のうち睡眠相後退型」が投与対象となっておりますが、診断分類に関わらず神経発達症を有する小児の入眠困難に対し、入眠潜時(覚醒状態から眠りに入るまでの所要時間)が短縮することが示されています。
メラトベルとロゼレムのどちらは効果が強いのか?
じつはこのことを示す臨床的な試験データは明らかではありません。
つまり、どちらが強いと明言はできないのです。
しかし、ロゼレムの方がメラトニン受容体への親和性が高く、催眠効果が高いのではないかと予想はできます。
個人的な診療の感覚ですが、処方するターゲットが、ロゼレム➡大人、メラトベル➡子供
と異なるため、効果の実感を単純比較できないのです。
メラトベルは添付文書上1㎎~4㎎の処方量が記載されておりますが、しばしば児童患者さんに0.4㎎~0.8㎎と少量処方を行うことがあります。
この少量処方でも、入眠時間が早まったり、入眠潜時が短くなることを実感しており、効果はまずまずありそうです。
一方ロゼレムは、成人の方のベンゾジアゼピン系薬剤(従来の睡眠剤)からの処方変更として使用されることがしばしばありますが、その際はベンゾジアゼピン系に比較して効果が弱く眠れないことがあります。
高齢者の方への睡眠剤の処方を行うときは、僕はロゼレムを第一選択にすることがありますが、その際は入眠しやすいと良い評価が得られやすいです。
メラトベルとロゼレムの効果を単純に臨床上比較することは難しいです。
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