ホーム > クリニックブログ > ADHDと双極性障害は症状が似ている①

ADHDと双極性障害は症状が似ている①

院長 丹羽 亮平 先生

名駅さこうメンタルクリニック
 院長 丹羽亮平

日本精神神経学会認定 精神科専門医
子どものこころ専門医
日本児童青年精神医学会 認定医
日本精神神経学会認定 精神科専門医制度指導医
厚生労働省 精神保健指定医
子どものこころ専門医機構 認定指導医

今回、双極性障害とADHDについて、診断の不明瞭なゾーンがあるという話です。

 

 

 双極性障害は以前の診断基準(DSM-ⅣTR)では、気分障害グループに属し、うつ病と同じ括りとなっておりましたが、DSM5から、独立した「双極性障害および関連障害群」として扱われることになりました。

 双極性障害の診断基準はDSM5において、以前と大きな違いはありませんが、「活動または活力の亢進」について言及されることになりました。

(双極性障害の躁病エピソードの記載は以下にあります。)

 

 

ADHDと双極性障害はそもそも合併を多く認め、

文献によりますが、おおむねADHDの10〜40%に双極性障害を併発すると言われております。

 

 

実際の診療の場面でも、双極性障害とADHD(特に衝動性の優位型)は、来院時の主訴、お悩みのエピソードが極めて似通っていると言えます。(お悩みを単一のエピソードで判断すると、双極性障害とADHDは区別の難しいものが多い)

 

例えば、躁病エピソードで記載されていることをあげます。

 

多弁・多動⇨ ADHDにも該当

 

 

睡眠欲求の減少⇨

 ADHD患者さんは概日リズム障害との合併が多いように、睡眠リズムの乱れが非常に多いです。

 

 ロングスリーパーで夜も昼も眠気を伴う方がいる一方で、精神的なストレスであったり、気分高揚するイベントをきっかけに極度の不眠となることはしばしば認めます。

 

 昨今は、ゲームやスマートフォンなど電子機器への依存的な利用にて、不眠傾向になりやすいです。

 

 

注意力の欠如⇨ADHDにも該当

 いわゆる不注意・注意散漫はADHDの核となる症状ですが、多動も相まり観念奔逸(話す内容や考える内容が、まとまりなく次々と移り変わっていく。)の延長ともいうべき症状もADHDにて多いものです。

 

 ある物事に取り組んでいても、途中でべつのことを考え出し、物事が完遂する前に新しいことに着手することなどです。

 

 ADHDの患者さんにしばしば認めることですが、テストにて途中まである問題を解いて、ふいに次の問題に移ってしまい、解き残しが多い、というのも注意の持続性の問題といえます。

 

 

 

 創造性のエネルギーのパワフルさにて思い出すのは、ピカソです。

 「最も多作な美術家」としてギネス記録も持つピカソですが、途中で別のアイディアが思い立ち書き終わらなかった作品が極めて多いことでも知られます。

 ピカソはADHDではなかったのではないかといわれています。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

● 躁病エピソード

  1. 気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または易怒的となる。加えて、異常にかつ持続的に亢進した目標指向性の活動または活力がある。このような普段とは異なる期間が、少なくとも1週間、ほぼ毎日、1日の大半において持続する(入院治療が必要な場合はいかなる期間でもよい)。
  2. 気分が障害され、活動または活力が亢進した期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上)(気分が易怒性のみの場合は4つ)が有意の差をもつほどに示され、普段の行動とは明らかに異なった変化を象徴している。
  1. 自尊心の肥大、または誇大
  2. 睡眠欲求の減少(例:3時間眠っただけで十分な休息がとれたと感じる)
  3. 普段より多弁であるか、しゃべり続けようとする切迫感
  4. 観念奔逸、またはいくつもの考えがせめぎ合っているといった主観的な体験
  5. 注意散漫(すなわち、注意があまりにも容易に、重要でないまたは関係のない外的刺激によって他に転じる)が報告される。または観察される。
  6. 目標指向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加。または精神運動焦燥(すなわち、無意味な非目標指向性の活動)
  7. 困った結果になる可能性が高い活動に熱中すること(例:制御のきかない買いあさり、性的無分別、またはばかげた事業への投資などに専念すること)
  1. この気分の障害は、社会的または職業的機能に著しい障害を引き起こしている、あるいは自分自身または他人に害を及ぼすことを防ぐため入院が必要であるほど重篤である、または精神病性の特徴を伴う。
  2. 本エピソード、物質(例:薬物乱用、医薬品、または他の治療)の生理学的作用、または他の医学的疾患によるものではない。

注:抗うつ治療(例:医薬品、電気けいれん療法)の間に生じた完全な躁病エピソードが、それらの治療により生じる生理学的作用を超えて十分な症候群に達してそれが続く場合は、躁病エピソード、つまり双極I型障害の診断とするのがふさわしいとする証拠が存在する。

● 軽躁病エピソード

  1. 気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または易怒的となる。加えて、異常にかつ持続的に亢進した活動または活力のある、普段とは異なる期間が、少なくとも4日間、ほぼ毎日、1日の大半において持続する。
  2. 気分が障害され、かつ活力および活動が亢進した期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上)(気分が易怒性のみの場合は4つ)が持続しており、普段の行動とは明らかに異なった変化を示しており、それらは有意の差をもつほどに示されている。
  1. 自尊心の肥大、または誇大
  2. 睡眠欲求の減少(例:3時間眠っただけで十分な休息がとれたと感じる)
  3. 普段より多弁であるか、しゃべり続けようとする切迫感
  4. 観念奔逸、またはいくつもの考えがせめぎ合っているといった主観的な体験
  5. 注意散漫(すなわち、注意があまりにも容易に、重要でないまたは関係のない外的刺激によって他に転じる)が報告される。または観察される。
  6. 目標指向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加。または精神運動焦燥
  7. 困った結果になる可能性が高い活動に熱中すること(例:制御のきかない買いあさり、性的無分別、またはばかげた事業への投資などに専念すること)
  1. 本エピソード中は、症状のない時のその人固有のものではないような、疑う余地のない機能的変化と関連する。
  2. 気分の障害や機能の変化は、他者から観察可能である。
  3. 本エピソード、社会的または職業的機能に著しい障害を引き起こしたり、または入院を必要としたりするほど重篤ではない、もし精神病性の特徴を伴えば、定義上、そのエピソードは躁病エピソードとなる。
  4. 本エピソードは、物質(例:薬物乱用、医薬品、あるいは他の治療)の生理学的作用によるものではない。

注:抗うつ治療(例:医薬品、電気けいれん療法)の間に生じた完全な軽躁病エピソードが、それらの治療により生じる生理学的作用を超えて十分な症候群に達して、それが続く場合は、軽躁病エピソードと診断するのがふさわしいとする証拠が存在する。しかしながら、1つまたは2つの症状(特に、抗うつ薬使用後の、易怒性、いらいら、または焦燥)だけでは軽躁病エピソードとするには不十分であり、双極性の素因を示唆するには不十分であるという点に注意を払う必要がある。

 

 

 

 

 

名駅さこうメンタルクリニック

丹羽亮平