成人・高齢者のひきこもりの方への対応 まずは診断と環境の把握
前回ブログの続きですが、
こういった方の受診では、診断、医療的な治療、社会・家庭生活のサポートが重要となり、これらを並行して行っていきます。
*診断について
前回ブログに記載の例では、比較的若年である中学卒業時から社会機能の障害がみられます。
まずはひきこもりの至るきっかけとなる原因は何かを突き止めます。
発達障害(自閉スペクトラム症)、注意欠如多動症(ADHD)、知的な低さなど、生来の脳機能の傾向を原因の可能性が高いことを念頭におきますが、他の疾患の可能性も考慮してしっかり問診を勧めます。
・幼少期の様子、健診や幼稚園では行動面の指摘はなかったか?
・小学校における友人関係、勉学の状況、問題行動について
また、生育環境、病歴も重要です。
・虐待に準じた生育環境があったか?
→衝動性に伴うトラブル、うつ病・不安障害などの情緒面の不安定さ、家庭機能の障害に伴う社会機能の低下
・本人の病歴について 例えば、幼少期から知的な低さの指摘あり、脳疾患の病歴など
・両親・兄弟の病歴。 家族に精神科通院歴はないか?
などです。
またこれらの状況が複数重なることも多く、個々のケースをそれぞれ考えなくてはなりません。
例えば、以下のケースです。
ケース1: 不安定な養育環境
+おそらく生来の知的な遅れ
+学童期に対人交流におけるネガティブな体験が重なったことで対人不安が悪化
ケース2: 注意欠如多動症の傾向
+小学校時からゲームへの依存傾向、生活リズムの乱れあり
+中学校時から勉強への困難が出現。ゲーム依存。
そしてひきこもりの症状が発生したのち、今回のケースは数十年が経過しています。
症状の発症から現在に至るまでの本人と周囲の状況により症状は変化します。如何なるものだったのか確認が必要です。
・患者さんの症状はどのように変化したか。(◯◯年前からうつ症状、ためこみ行動が出現、など)
・患者さんへの家族の対応や家庭内の状況はどうだったか?
・精神科などの病院への受診は?保健所等への相談はあったのか?
最終的な病名は、「うつ病」「発達障害」などの端的な単語にはなりますが、こういった状況は複雑に絡み合ったものであり、背景はひとりひとり全く異なるものになります。
名駅さこうメンタルクリニック院長
丹羽亮平