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嗅覚障害はうつ病のリスク。コロナ鬱との関連。

院長 丹羽 亮平 先生

名駅さこうメンタルクリニック
 院長 丹羽亮平

日本精神神経学会認定 精神科専門医
子どものこころ専門医
日本児童青年精神医学会 認定医
日本精神神経学会認定 精神科専門医制度指導医
厚生労働省 精神保健指定医
子どものこころ専門医機構 認定指導医

 「疲れ」を数値化(定量化)して目に見える形で把握できないか、という試みは最近注目されているトピックの一つです。

 

 「疲労感」を表すバイオマーカーとして、「ヘルペスウイルス」が挙げられます。

 (疲労と関連あると指摘されるヘルペスウイルスは6型:HHV−6、7型:HHV−7になります。)

 

 

 ヘルペスウイルスは幼少期にほとんどの人がかかったことがありますが、その後、基本的に症状なく潜伏感染となっております。

 しかし、宿主の健康状態の悪化やストレス時には、潜伏しているヘルペルウイルスが危機的な状況の宿主から逃げ出そうと、唾液、皮膚、粘膜に出現します。

 その結果、口まわりに水泡が出現することがあります。(口唇ヘルペス)

 

 つまり、ストレス時には唾液中のヘルペスウイルスを測定すると増量しているわけです。

 

 

 ところで最近、唾液中のヘルペスウイルス6型(HHV−6)の一部が嗅球(鼻腔に最も近い脳部位。匂いをつかさどる器官。)に移動した時に、細胞にダメージを与えるSITH-1というタンパク質を作り出し、嗅覚細胞の死滅することがわかりました。そうなると、嗅覚障害を認めます。

 

 また、SITH-1は、嗅覚細胞だけではなく、嗅球につながる脳にもダメージを与え、その結果うつ病の原因となることが判明したのです。 

(東京慈恵会医大 近藤一博教授の研究チームは、嗅球の細胞死により、記憶を司る海馬の神経再生が抑制されることを確認されました。みなさんも、匂いにより過去の情景が思い出される事などは経験があると思いますが、嗅覚と記憶は元々深い関係にあります。レビー小体型認知症では、認知機能低下の前にうつ状態の時期があり、嗅覚障害もでやすいと言われています。)

 

 

 ストレス↑ 右矢印 唾液中のヘルペスウイルス↑ 右矢印 嗅球にヘルペスウイルスが移動しSITHをだす 

 

右矢印 嗅細胞の破壊にて嗅覚障害右矢印 海馬のダメージによるうつ病の発症

 

 

このヘルペスウイルスがうつ病の原因になりうるという報告は、大きなインパクトがある一方で納得のいくものでした。

 

 

 ところで、新型コロナウイルスも高頻度な症状として味覚、嗅覚障害が挙げられます。

 ここからはあくまで僕の仮説ですが、新型コロナウイルスもヘルペスウイルスと同様に、嗅覚細胞が障害される際に、海馬のダメージに繋がりうつ病のリスクになるのではないかと考えています。この仮説は新型コロナ感染寛解後の後遺症として、頭の回転が遅くなり以前より仕事に時間がかかるという方や、疲れやすさや倦怠感、気分の落ち込みなどの長引く方が多いというデータとも合致します。また、このような海馬ダメージの蓄積は、将来の認知症発症に関わってくるという説もあります。

 つまり「コロナ鬱」は、毎日の生活上のストレスや不安の増加が原因であるだけでなく、ウイルスそのものの働きも影響しているのかもしれません。

 早くこの感染症の全貌が後遺症を含めて明らかになり、より合理的な対策や治療技術の進歩、生活の質の向上に繋がることを願っています。

 

 

 

 

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丹羽亮平