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①病的な溜め込み症 〜ゴミ屋敷の住人〜

院長 丹羽 亮平 先生

名駅さこうメンタルクリニック
 院長 丹羽亮平

日本精神神経学会認定 精神科専門医
子どものこころ専門医
日本児童青年精神医学会 認定医
日本精神神経学会認定 精神科専門医制度指導医
厚生労働省 精神保健指定医
子どものこころ専門医機構 認定指導医

ニュースにて、『ごみ屋敷』の住民と隣人との近所トラブルが扱われておりましたが、

 

『ごみ屋敷』ほどの(一般的には価値がないと思われているもの、不要なものの)収集癖、捨てられない状態は病気なのでしょうか?

 

右矢印結論からいうと、何かしらの脳機能障害の可能性が高いと考えられます。

 

 しかし、『溜め込み行動』は『溜め込み症』という精神障害が原因とは限りません。

 溜め込み行動は、いわゆる脳の器質性障害(脳の損傷、脳血管障害の後遺症など)、認知症、他の精神疾患に伴い出現することも多く、まずは画像検査、採血検査などを行い症状の原因は何か検索することをすすめます。

 

 

 

 

『溜め込み症(Hoarding Disorder)』という疾患の規定がDSM5にてあります。

 

DSM Ⅳまで「溜め込み強迫」として強迫性障害のひとつのジャンルの扱いでしたが、DSM5にて強迫性障害とは独立した精神障害(強迫関連障害)として規定されました。

 

DSM5の疾患基準を簡単にまとめると、

 

  1. 所有物(一般的に価値がないものであることが多い。生活ごみ、古い雑誌・本・服など。)を継続的に収集し、整理できず、捨てられない。
  2. 捨てることにとても大きな苦痛をともなう。(そのため、収集物の処理をめぐって、家族や隣人と揉めることが非常に多いです。)
  3. 溜め込みによって、日常生活、社会生活、職業的に大きな障害となっている。(例えば、ごみが散乱し家で寝るスペースがない。悪臭。隣人トラブル。困り果てた家族と別離に至る、など)
 

 4.他の脳疾患、精神疾患が原因ではない。

 

 

 一般的に、女性より男性が多く、年齢も高齢になる程有病率が高いです。

 

 自身の推測ですが、診断には至らないレベルの神経発達障害(自閉スペクトラム症、ADHDなど)の傾向のある方が、

こだわり(限定的興味)や衝動性・遂行機能障害(欲しいものを我慢できない、計画的な買い物の苦手さ、管理・整理整頓の苦手さ)が加齢変化に伴い増悪し、『溜め込み症』に繋がることが少なくないのではないかと考えています。

 

 

 

 溜め込み行動に悩まれて抑うつ症状を認めクリニックを受診されたケースをしっておりますが、

溜め込みをされる本人は、溜め込み行動に悩んでいらっしゃらないことが多く、医療的な介入の難しさを感じます。

 

 

 『溜め込み行動』が主訴にて来院される場合、家族と役所・保健所職員に促されてみえる方がほとんどです。

 

 

 

丸ブルーまずは、脳疾患、他の身体疾患(意識障害に伴い認知機能低下に至る疾患。薬物、アルコールなどの影響は?)の検査を勧めます。

 

 器質性疾患が除外された上で、精神疾患の診断を行い、治療に結び付けていきます。

(溜め込み行動の精神疾患の診断については次回ブログにて。)

 

 

 

 

 

いわむらかずおさんの絵本が娘のブームです。

 

 

 

 

強迫性障害に関連するクリニックブログをまとめました下矢印

https://meiekisakomentalclinic.com/blog_category/disease/kyouhaku/

 

 

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