発達障害へのマイルドな薬物療法
今年の冬は暖かいですね。
屋外で過ごすと寒すぎず、しかし冬らしい澄み渡る空気が感じられ、心地よいです。
発達障害(自閉スペクトラム症)の患者さんに対して、環境調整や心理的アプローチでは対応が不十分である時、薬物療法が治療の選択肢として挙がります。
その際、向精神病薬を一般的な成人にたいする規定量で処方すると、副作用が強く出現し、期待する薬理効果がさっぱり望めないことをしばしば経験します。
診察における実感として、こだわりや感覚過敏の強い方には非常にマイルドな処方が合うと考えています。
例えば、漢方であったり、規定量に対して極めて少量の向精神病薬の処方です。
こだわりを強く認める方、外界刺激(温度変化、音や匂いなど様々な刺激)への被刺激性が高い方(身体症状や精神症状を来たしやすい方)は内服薬への効果も敏感ではないか。
薬剤の少量処方については、内服に伴うプラセボ効果を唱える方もいるかと思いますが、副作用や身体への影響が極めて少ない状況で、明らかに内服に伴う症状の改善を認めるのであれば、プラセボ効果だとしてもよいのではないかとも。
『発達障害の薬物療法 ASD・ADHD・複雑性PTSDへの少量処方』の著書の中で、杉山登志郎先生は、少量処方による薬理効果について、複数の可能性を述べていらっしゃいますが、特に納得させられた箇所をあげます。
『生体が侵襲に対して大々的な反応を生じないレベルで薬物を使うことこそ、本来の正しい用い方ではないか。最低限の生体への刺激を行い、それによって生体に起こる一連のカスケードに後は任せるといった用い方である。』
名駅さこうメンタルクリニック 院長
丹羽亮平
名駅さこうメンタルクリニック 院長
丹羽亮平