ホーム > クリニックブログ > 広汎性発達障害と自閉症スペクトラムとの違い

広汎性発達障害と自閉症スペクトラムとの違い

院長 丹羽 亮平 先生

名駅さこうメンタルクリニック
 院長 丹羽亮平

日本精神神経学会認定 精神科専門医
子どものこころ専門医
日本児童青年精神医学会 認定医
日本精神神経学会認定 精神科専門医制度指導医
厚生労働省 精神保健指定医
子どものこころ専門医機構 認定指導医

広汎性発達障害と自閉症スペクトラムとの違い

 

自閉症、アスペルガー障害など、いわゆる発達障害の概念が医学的に判明してから歴史が乏しく、疾患概念・理解や分類は日進月歩に変化しています。

 

DSM Ⅳ‐TR(精神障害の診断と統計マニュアルⅣ-TR 2000年)にて広汎性発達障害は以下の分類がされていました。

 

広汎性発達障害

・自閉性障害

・レット障害

・小児期崩壊性障害

・アスペルガー障害

・特定不能の広汎性発達障害(非定型自閉症を含む)

 

それが、DSM 5(精神障害の診断と統計マニュアル‐5 2013年)にて、広汎性発達障害という名称がなくなり自閉症スペクトラムとなったのです。レット障害は染色体異常に伴うため、発達障害とは関連のない疾患であることが分かり自閉症スペクトラムから除外されました。

また、診断内容の変化として、

①社会性、コミュニケーションの障害

②常同性

の項目についてDSM 5の自閉症スペクトラムでは、厳密に両方が必須項目となりました。その結果、これまで上記症状のどちらか(多くの方は常同性の項目)が自閉症やアスペルガー障害の診断閾値未満であったDSM Ⅳ‐TRの「特定不能の広汎性発達障害」が自閉症スペクトラムの診断からもれることになります。

 

 つまり、DSM Ⅳ‐TRからDSM 5になった過程で、

 

 広汎性発達障害のうち、自閉性障害、小児期崩壊性障害、アスペルガー障害が自閉症スペクトラムに統合されたということです。

そして、「特定不能の広汎性発達障害」(日本ではあまり使われませんが海外ではこの診断が頻繁に使われていた)は、DSM-5において、新設された「社会的コミュニケーション障害」に該当することになるのではないかと思います。

 

なんにせよ、まだまだ、発達障害、自閉症、アスペルガー障害(自閉症の知的障害がないものというニュアンス)という言葉が一般的には使われるのではないのでしょうか。

 

補足ですが、ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)では広汎性発達障害、自閉症、アスペルガー症候群の診断名とも認めます。

F84 広汎性発達障害

  • F84.0 自閉症
  • F84.1 非定型自閉症
  • F84.2 レット症候群
  • F84.3 その他の小児<児童>期崩壊性障害
  • F84.4 知的障害〈精神遅滞〉と常同運動に関連した過動性障害
  • F84.5 アスペルガー症候群
  • F84.8 その他の広汎性発達障害
  • F84.9 広汎性発達障害,詳細不明