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ADHDの治療について ADHD treatment

院長 丹羽 亮平 先生

名駅さこうメンタルクリニック
 院長 丹羽亮平

日本精神神経学会認定 精神科専門医
日本児童青年精神医学会 認定医
日本精神神経学会認定 精神科専門医制度指導医
厚生労働省 精神保健指定医
子どものこころ専門医機構 認定指導医
名古屋大学病院精神科・親と子どもの心療科
・小児科関連施設群認定 連携施設A

注意欠如多動症(ADHD)の内服薬について、ご相談が多いため、こちらでまとめた説明を載せた文書を上げさせて頂きます。


そもそも、精神科・心療内科における治療は、薬物治療非薬物治療に分けられます。


ADHDの治療について

非薬物療法(心理カウンセリング、作業療法、環境調整:家族が患者さんへの対応を変える、仕事や学校などの環境を変える、など。)だけでは症状の改善に限界があったり、症状のお困りが非常に強い時には、薬物療法を提案いたします。(薬物療法にて治療効果の得られる症状の場合に対してです。)


ADHDは生まれ持ったもともとの特性と捉え、治療改善が難しいと思われている方は多いですが、薬物療法による治療効果は高く、改善の期待ができる症状群です。


まず、ADHD症状に対してはじめて薬物療法を行う際は、以下の3剤が考慮されます。


薬ごとに異なる効果や副作用を伴うため、年齢や症状を見ながら検討します。

  • ストラテラ
  • コンサータ
  • インチュニブ

また、この3剤を使用しても、十分な効果の得られない方 or/and 副作用など何かしらの理由で上記薬を使えない方には、ビバンセを考慮します。

  • コンサータ(メチルフェニデート):中枢神経刺激薬。効果はおよそ12時間弱。
    不注意、多動・衝動性の全ての症状に効果が期待され、インチュニブ、ストラテラに比較すると、服用後すぐに効き、効果も強いです。
  • インチュニブ(グアンファシン):α2Aアドレナリン受容体作動薬、非中枢刺激薬。
    多動と衝動性と感情に対する効果が期待できる。24時間効果をもつ。
  • ストラテラ(アトモキセチン):選択的ノルアドレナリン再取込阻害薬、非中枢性刺激薬。
    不注意、多動、衝動性の全ての症状を24時間、マイルドに改善します。
  • ビバンセ(リスデキサンフェタミン):中枢神経刺激薬。6~17歳の小児のみ承認。
    不注意、多動・衝動性の全ての症状に効果が期待され、基本的に他の3剤よりも強いと考えられています。他の治療薬で効果が不十分であった場合の選択肢となります。

コンサータ
(メチルフェニデート)について


・「中枢神経刺激薬」です。

脳内の神経間のドーパミンの再取り込みを阻害することにより、ドーパミンが受容体に結びつきやすくなることで、ADHDの症状を改善させます。

良い点について

  • 不注意、多動・衝動性にシャープな効果があります。
    日中の学校生活や仕事のトラブルなど、これまで他の治療(環境調整や他の薬物療法)を尽くしても改善が難しかった症状に対して、著効する可能性があります。
  • 効果はおよそ12時間。(診療における実感としては10~12時間)
    おもに日中の症状への効果です。
  • 集中力が増す。(授業をじっくり聴けるようになる)
  • いやなことに向き合いやすい(⇒宿題をやるようになる。不登校の改善にも効果がある。)。
  • 眠気を飛ばす。(つまり、内服時間が遅くなると、寝つきがわるくなる恐れあり。)
  • テキパキ動きやすくなる。
  • イライラが減る。
  • 気分の変調が減る。
  • 話をじっくり聴けるようになる。

悪い点について

副作用のリスクがある。

以下の人は基本的に処方できません。

  • 過度の不安、緊張、興奮性のある人
  • 閉塞隅角緑内障の人
  • 甲状腺機能亢進のある人
  • 不整頻拍、狭心症のある人
  • 過去にコンサータ錠に含まれる成分で過敏症のあった人
  • 運動性チックのある人
  • 重いうつ病のある人
  • 褐色細胞腫のある人
  • モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害剤を飲んでいる、または飲むのをやめてから 14 日以内の人

副作用

  • 頻度は多くはないですが重篤な副作用・・不整脈、脳血管障害(頻脈や血圧上昇に伴うもの)
  • 重篤ではないけれど、しばしば起こる副作用(内服開始のころが一番出やすいです)
  • 吐き気、頭痛、めまい、食欲不振、血圧上昇、頻脈

依存性を認めること。


非常に効果のある反面、中枢神経刺激薬としての依存性を認めます。

そのため、特定の医師が決まった日数のみ処方し、患者さんの症状に注意をはらって処方します。

また、初診時のお困りが改善し一定期間保てたら、内服中止にする提案を行います。



(同様の成分を含んでいた「リタリン」が過去に乱用が問題となったこともあり、コンサータも一般的にあまり良いイメージがないのではないでしょうか?
現在は、違法な乱用を防ぐために流通規制委員会が設置されており、登録された医師のみがコンサータを処方可能であり、患者さんもコンサータを処方する際は登録する必要があります。)


↓コンサータについてのよくある質問について書きました。参考にしてください↓

インチュニブについて


インチュニブは、脳神経の後シナプスのアドレナリン受容体を活性化することでシグナル伝達を増強させる作用をあらわします。

ストラテラ、コンサータとは全く作用の異なる薬です。

良い点について

  • 多動・衝動性、気分のコントロールに良い
    • 具体的には、
    • かんしゃく、暴言、暴力
    • 思い立ったら欲求を我慢できない。
    • 気分のアップダウンが大きい。
    • リストカット、全身のピアスなどの自傷行為。過食嘔吐。
  • などの効果を持ちます。

  • 依存性がない。
  • 24時間の効果を持つ。

悪い点について

副作用のリスクがある。

眠気と血圧低下・徐脈にする副作用のリスクがあります。(低血圧、徐脈、鎮静、傾眠)
その結果、頭痛、失神の可能性もあります。

・不注意症状への効果は弱いです。(そのため、コンサータ、ストラテラとの併用もあります。)


↓インチュニブについてのよくある質問について書きました。参考にしてください↓

ストラテラ
(アトモキセチン)について


ストラテラは、脳の前頭前野の神経末端にあるノルアドレナリントランスポーターを選択的に阻害し、ノルアドレナリンとドパミンの神経伝達物質の濃度を上昇させ、前頭前野の機能を改善させます。

良い点について

  • 不注意、多動性、衝動性の改善がありますが、コンサータやインチュニブに比較するとそれぞれマイルドな効果です。
  • 24時間の効果です。
  • 依存性はありません。

悪い点について

副作用のリスクがある。

主な副作用としては頭痛、食欲減退、傾眠、腹痛、口渇、吐き気、血圧上昇、頻脈

(副作用の傾向はコンサータと同じである。
しかし、コンサータに比較すると、不整脈・脳心血管障害などの重篤な副作用のリスクが少ない。)

・効果がマイルド

・効果のでる内服量まで増量するのに時間がかかる。

内服を開始して、3段階の増量おこない維持量(安定して効果を望める量)に達します。


↓ストラテラについてのよくある質問について書きました。参考にしてください↓