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自閉症スペクトラム/
注意欠如・多動性障害(ADHD)などDSM-5

院長 丹羽 亮平 先生

名駅さこうメンタルクリニック
 院長 丹羽亮平

日本精神神経学会認定 精神科専門医
日本児童青年精神医学会 認定医
日本精神神経学会認定 精神科専門医制度指導医
厚生労働省 精神保健指定医
子どものこころ専門医機構 認定指導医
名古屋大学病院精神科・親と子どもの心療科
・小児科関連施設群認定 連携施設A

発達障害

新しくDSM-5にて神経発達障害というカテゴリーができ、そのなかに自閉スペクトラム、注意欠如・多動症など以下の疾患が含まれます。


  • 自閉症スペクトラム(広汎性発達障害・自閉症・アスペルガー障害)
  • 注意欠如多動性障害(ADHD)
  • 学習障害
  • チック障害

 

 それぞれ異なった特徴がありますが、共通していることは生まれつきの脳の機能の働きが原因であるということです。親のしつけや愛情不足で『神経発達障害』を発症することはありません。


 では、これらの疾患について『生まれつきの脳』が原因なら改善しないのでは?と思われる方も多いとおもいます。

 その質問にいつも診察室で説明させていただいていることは、
根本的な脳の働きは変えられないです。
しかし、困りごとや悩んでいる症状は改善する可能性が高い。
ということです。

 患者さんそれぞれの問題と向き合いながら充実した生活が送れるように、前向きな提案を積極的にしていきたいです。
 また、もしも一人で悩みや問題を抱え込んでいる方がいらっしゃるなら、ぜひお話にきてください。困っていることを打ち明けることだけでも大きな一歩になると思います。

※クリニックブログに関連した文章を載せています。

https://meiekisakomentalclinic.com/blog/category/disease/hattatu/

自閉症スペクトラム 
(自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー障害)

 現在の国際的診断基準(DSM-5)では、広汎性発達障害とほぼ同じ群を指して自閉症スペクトラムと呼び、自閉症、アスペルガー症候群、という呼び方はなくなり、本質的にひとつの疾患と考えられています。
 しかし、実際の診察の場では一般的に知られている「自閉症」「アスペルガー症候群」という言葉を使うことがまだまだ多いと思います。
自閉症スペクトラムと発達障害の違い

症状

自閉症スペクトラムの症状は

①社会的コミュニケーションおよび対人関係の障害
②行動、興味に限定されたこだわりがあること

の2つが軸となっています。


《こどもの患者さんによく認めること》

  • コミュニケーションの悩み
    言葉がおそい。一人遊びが多い。友達付き合いが苦手。不登校。など
  • こだわり
    興味のある動作のみをずっと行い続ける。生活や遊びの中でマイルールがある。など
  • 感覚の敏感さ 
    味覚の敏感さ(食事の好き嫌い)、音への敏感さ、肌の敏感さ(チクチクした素材が苦手)など
  • 運動面の不器用さ

《大人の患者さんによく認めること》

  • 雑談が苦手。言葉を額面通りに受け取りやすい。
  • 仕事や家事で、複数の作業を同時進行に行うことが難しい。作業の優先順位がつけられない。
  • 興味のある仕事に没頭する。細部にこだわる。
  • 職場では上司からの指示待ちになりやすい。また、指示以上の仕事を機転をきかせて行うのが苦手。
  • 社交辞令をそのまま受け取ってしまう。発言がストレートでトラブルになる。

治療

患者さん自身に対して
  • お悩みにあわせた環境(家庭生活、学校生活、仕事など)の調節の提案。自閉症スペクトラムの理解を促すこと。
  • 心理療法
    (子供の患者さんにはプレイセラピー、大人の患者さんにはソーシャルスキルトレーニング・認知行動療法・カウンセリングなどを提案しております。)
  • 薬物療法
    (自閉症スペクトラムの感覚の過敏による困り感、強い不安感や強迫観念、並存して認めるうつ病などに対して)

家族に対して

  • 環境調節の提案。疾病教育。ペアレントトレーニング など

 


まず、治療上の大きなポイントは、現在支障を来している状況や環境を調整し、対応を考えることです。
 家族の方を含めて、自閉症スペクトラムの特性を生かした生活状況の設定を考えていきたいです。

 困りごとに応じて、お薬を処方します。環境調節や心理的アプローチでは補いきれない不安感や過敏さに効果的です。

 患者さんの中には、自閉スペクトラムに加えて他の精神疾患を罹患されている方も少なくありません(ADHD、うつ病、不安症、強迫性障害 など)。
 その際はADHDの治療薬や抗うつ薬など併発した精神疾患の治療薬が優先的に使われることが多いです。非定型抗精神病薬、抗不安薬、睡眠剤、抗うつ薬など使われます。

 

また、心理療法のスキルを取り入れることを提案することがあります。
 苦手な状況を想定した認知行動療法、不安やストレスに伴う身体の不調へマインドフルネス認知療法などがあります。
 ご家族の悩みやサポートについてペアレントサポートも行っております。

心理療法の説明はこちら

自宅の治療のサポート、作業療法をご希望の方には訪問看護も行わせていただきます。

注意欠如・多動症(ADHD)

注意欠如・多動症(ADHD)

多動・衝動性、あるいは不注意が主な症状になり、一般的に小学校の入学前に認めることが多いです。  

 簡潔な原因の説明ですが、集中力・衝動性などをコントロールする脳内の部位にて、神経伝達物質のドーパミンやノルアドレナリンが少ないことで、脳機能の働きに障害が生じていると考えられています。  

主な症状はDSM-5の診断基準を載せています。


《典型的な症状》

A1:以下の不注意症状が6つ(17歳以上では5つ)以上あり、6ヶ月以上にわたって持続している。

a.細やかな注意ができず、ケアレスミスをしやすい。
b.注意を持続することが困難。
c.上の空や注意散漫で、話をきちんと聞けないように見える。
d.指示に従えず、宿題などの課題が果たせない。
e.課題や活動を整理することができない。
f.精神的努力の持続が必要な課題を嫌う。
g.課題や活動に必要なものを忘れがちである。
h.外部からの刺激で注意散漫となりやすい。
i.日々の活動を忘れがちである。


A2:以下の多動性/衝動性の症状が6つ(17歳以上では5つ)以上あり、6ヶ月以上にわたって持続している。

a.着席中に、手足をもじもじしたり、そわそわした動きをする。
b.着席が期待されている場面で離席する。
c.不適切な状況で走り回ったりよじ登ったりする。
d.静かに遊んだり余暇を過ごすことができない。
e.衝動に駆られて突き動かされるような感じがして、じっとしていることができない。
f.しゃべりすぎる。
g.質問が終わる前にうっかり答え始める。
h.順番待ちが苦手である。
i.他の人の邪魔をしたり、割り込んだりする。

*ほかの疾患を併せて認めることが多いです。

  • 自閉症スペクトラム(コミュニケーションの苦手さ、こだわり)、学習障害の症状を認める。
  • 睡眠障害と密接に関係があり、日中の急な眠気や朝の起床困難を認める。
  • 依存症(ゲーム、アルコール、ギャンブルなど)のリスクが高い(そのことで仕事や家庭、学校生活に支障を来たしやすい)。

治療

 ADHDの治療は主症状である不注意・多動性、衝動性を改善させることだけではありません。
 環境を調節し行動スタイルを見直すことで、毎日の生活が充実され患者さん自身が前向きにすごせるよう取り組みます。

合併している症状を考慮して、薬物療法、心理療法、の中から治療を提案します。


薬物療法

 不注意・多動性・衝動性の症状を改善させる効果があり、以下の3剤が処方可能です。(2019年2月時点)
 薬ごとに異なる効果と副作用を伴うため、年齢や症状を見ながら検討させていただきます。  

  • ストラテラ:小児、成人ともOK。24時間の効果をもちます。
    ジュネリック製剤もあります。
  • コンサータ:小児、成人ともOK。約半日、強い効果をもちます。
  • インチュニブ:小児のみ。24時間効果をもちます。

例①:仕事・学校の授業に集中できない。おもに日中に効果が欲しい。
   →コンサータを優先的に処方します。
例②:家庭の問題がメイン。家庭で親や兄弟に暴言・暴力がある。
   衝動的に家出、万引きなどの問題行動がある。
   →インチュニブを優先的に処方します。


心理療法

年齢や症状を見ながら心理療法を提案させていただきます。
また、日常生活において家族がどのように患者さんに接していけば良いのか悩んでいらっしゃるケースをしばしば認めます。このようなご家族にはペアレントトレーニングを勧めさせていただきます。

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